「赤石またぎ」

INDEX

LINK

 

「赤石またぎ」の一年

鯵ヶ沢町の赤石川流域には、いわゆる「赤石またぎ」と呼ばれるまたぎのグループは、次のとおり3つありました。

 @大然と一ツ森のまたぎ
 A種里のまたぎ
 B南金沢のまたぎ

これらのグループ間で狩猟区域はほぼ分け合っており、獣を捕獲した時に言う呪文も違っていました。
中でも、大然と一ツ森は、「またぎの里」として一流のまたぎが集中していました。

 

また、「赤石またぎ」は、藩政時代、殿様の御用またぎとしても知られています。

 

「赤石またぎ」は、主にクマ(ツキノワグマ)の狩猟を主としてきました。しかし、年中山の中で獣を追いかけているわけではありません。冬季はまたぎ専門であるが、夏季には水田を耕作し、山菜を採り、マスやアユを捕り、世間並みのごく普通の生活をしていました。

 

農繁期を除いた日々は、またぎ以外の人達に比べると、山菜採り、魚捕り、炭焼き、薪伐り等には、自家用以外時間を割かず、ほとんどまたぎに費やしています。そして、山に入れば、里での出来事も知らないで、ひたすら獲物を追い掛けているほど、熱中した時を過ごしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤石またぎ」の山での生活

山での生活は大変厳しいもので、いろいろな禁忌事項(タブー)がありました。

 

≪山での禁忌の一例≫

●汁かけ飯は食べない
●サメやイカは持っていかない
●咳払い、あくび、歌を歌うことや口笛を吹くことはしない
●すもうをとって戯れたりしてはいけない
●何事をするにも静かにやる
●器具の取り扱いも音のしないようにする
●酒・たばこはいけない
●足音を立てて歩いてはいけない
●山言葉で語らないといけない
●その家でお産があったものは仲間に入れない

 

≪またぎが使う山言葉の一例≫

里言葉 山言葉   里言葉 山言葉
クサノミ クマ イタジ
ヘタゲ ヘダ
またぎ頭 シカリ かもしか ケラ
ヘタゲ さる シネカ
ヘラカ ノウサギ ウジ
ケッポウ タヌキ ムジナ
ヘダレ アナグマ マミ
サズミ リス キネズミ
みそ サネ はなれざる ボッケザル
なべ クロッペ ムササビ バンドリ
へら コダラキ にわとり タマゴテデ
杓子 カツコミ ねずみ コンジャ
飯を食う クサノミヲツム ツメタカセ
おかず セモゴロ タカセ
寝る スマル へび ズレ(リ)
とった タタイダ オワカ
死んだ サズトッタ オーワッカ
やせる アガイテラ コワッカ
越えている ケモクレテル アナピー
酔う ワカボエ 小屋 トマ
酒を飲もう ジワカをツツル 鉄砲 スノベ
早く家へ帰りたい ノラヘムズリタイ トッペ

 

山の中でまちがって里言葉を使うと、冬でも裸にされて水こり(身を清めること)をとらされたそうです。

 

「赤石またぎ」の家族の生活

「赤石またぎ」の家族は、近所付き合いについては、厳重に気をつけなければなりません。次に禁じられている行為の一部を紹介します。

●結婚披露宴などの祝い事や、出産に関わる行事には絶対 行かない。葬儀や法要に出席することは、差し支えがない。
●贈られたお菓子等の引出物を食べることも許されない。
●神仏を拝み、供え物をしてもいいが、線香を手向け、
鐘をならすことはいけない。
 
クマが撃たれて致命傷を負い、ひどい時は、内臓を露出して
でもなお逃げ回り、なかなか倒れない時は、家族がやっては
ならないことをやっていることがあるといいます。


Copyright (C) 2008 shirakami Nature School , All rights reserved.